備忘録

映画と本の感想を時々書いていきたいです。

ここ一箇月で読んだ本まとめ。

今年に入ってから、booklogで読んだ本を管理している。サイトデザインがシンプルなのと、読書目標を自分で設定できるのがいい。

本を読み終わって登録するたびに、目標達成には○日に○冊のペースで読まなきゃいけませんよー、と教えてくれるので、自分のような怠惰な人間には動機付けとして非常に有効です。もちろんこれには、期限が迫っているのに今のままのペースでは達成が難しい、となった時に、軽薄な新書で一冊を埋めてごまかす、という行動を誘発するという罪の部分もあるわけですが。ただまあ、そこは使う人間の性根の問題であってシステムが悪いのでは全くなし、意識しすぎず有効に使っていこうと思います。

前置きが長くなったけれど、ここ一箇月で読んだ本の感想を書いていきます。

 

浜村渚の計算ノート (講談社文庫)

浜村渚の計算ノート (講談社文庫)

 

 *ライトなミステリーで簡単に数学的素養を身につけたい! という即物的な動機で購入。目的は特に果たされなかったけど、けっこう面白かった。

*主人公の浜村渚が犯人を追い詰める際に使う数学的な小ネタが、素人からすると気が利いてるなー、と思う。

 

ドラキュラ紀元 (創元推理文庫)

ドラキュラ紀元 (創元推理文庫)

 

*ディオゲネス・クラブに属する諜報部員チャールズ・ボウルガードは、マイクロフト・ホームズの命により、ロンドン市内で起こる連続娼婦殺害事件の謎を追うが……

*『吸血鬼ドラキュラ』でヴァン・ヘルシングがドラキュラ伯爵に敗れていたら……? というifを舞台に、キム・ニューマンの吸血鬼への偏愛をこれでもかというくらい詰め込んだ作品。どれくらい詰め込まれているかというと、主人公たちをのぞくほぼ全ての登場人物に小説、映画、史実等々の出典があり、本編550頁に対して登場人物事典が50頁(訳者の苦労が偲ばれる……)に及ぶという大風呂敷。

*これがもう滅茶苦茶面白くてびっくり。今年有数どころかこれまで読んできた歴史改変ものの中でもかなり高得点です。

*このシーン本当に必要? とか後からふり返ってみれば欠点は見つかる話なんだけど、クライマックスに向けての収束が見事すぎて、後半に入ってからは全くダレることなく読破しました。

*知識量・情念は凄いけれど、本筋は大して……という評もネットでは散見されるけど、いやいやストーリーもこれ、決して誰にでも書ける話ではないでしょう、と声を大にして主張したいですね。

 

ドラキュラ戦記 (創元推理文庫)

ドラキュラ戦記 (創元推理文庫)

 

*あんまり『ドラキュラ紀元』が面白かったので、続けてこっちも読んでしまった。

*前作に引き続き、舞台はドラキュラ伯爵の勝利以後、吸血鬼が大手を振って生きるようになった欧州、今回は第一次世界大戦を描く。

*中心となる視点人物はドイツ軍の前線基地の秘密を探るディオゲネスの新米諜報員と、故国を捨ててドイツに流れ着いた作家エドガー・ポー。両者とも序盤でWW1最高の撃墜王レッド・バロンことリヒトホーフェン大尉と因縁を結び、リヒトホーフェンの内面は描かれないながら彼を軸に物語が進行する。

*上の二人と比べると活劇シーンは少ないながら、もう一人の視点人物である吸血鬼の女性記者メアリの権力に対峙する様も格好良い。

*前作があってこその物語ではあるんだけど、こちらの方がよりエンタメとしての出来は高まっているように思う。一作目のハードルを軽くこえてきていて凄いわー。

*吸血鬼に対する偏愛は前作に引き続きなんだけど、それ故の、というべきか、第一次大戦という舞台であるがゆえの、ゴシックなものに対するいっそ酷薄とも思える描写が素晴らしいです。オタクは自己否定に弱い……!

 

 *人気ライトノベルシリーズの5作目。面白い、なんなら勢いで泣かされたくらい面白いんだけど、如何せん現実の将棋界をもとにしたネタが大体察せてしまうが故に今イチ乗り切れない作品。

*どうしても元ネタになっている実在の人物と、作中の人物が重なって見えてしまうがために、ライトノベルの過剰な描写が鼻についてしまう(その意味では、今回の敵役についてはいっそ清々しいというか、ここまで開き直るなら許せるわと逆に思えた)。とりあえず対局中に喋るのはやめてほしい……。

 

アリス・ザ・ワンダーキラー

アリス・ザ・ワンダーキラー

 

 *若手ミステリー作家ではいま一番好きな作家の最新刊。にもかかわらず出版から半年経ってようやく感想を書き始める腰の重さよ……。

*ミステリーを結局キャラクター小説として読んでしまう人間なので(なので、早坂先生の作品では飛び抜けて『虹の歯ブラシ』が好きです)、論理パズル的な作品はなかなか評価が難しい。でもクライマックスの軽さも含めて決して嫌いではないです。好きです。もし続きがあるのなら、もちろん買って読みたいです。

 

 

ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)

ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)

 

*宇宙人との接触の痕跡ではないかと推測される<ゾーン>が出現した地方の村を舞台に、<ゾーン>から未知の物体を回収することを生業にする、ストーカーと呼ばれる人間の半生を描く、説明不要のロシアSF。

 *そこに生きる人間のことを一顧だにしない未知との遭遇、という、よくよく考えればむしろそっちの方が当たり前なんだけど中々描かれない話で面白く読みました。

*ストガルツキーは課題図書に指定されているので、今後も読んでいきたい。

 

ヒロシマの人々の物語

ヒロシマの人々の物語

 

 *ずっと前に『眼球譚』を読んで以来、ひさびさのバタイユ。人間の死を計量可能な単位として語ることが「人間的」とされ、極限状態のなかで人間がもがく様を「動物的」と位置付ける、日常的な視座を逆転される語り口が印象的。

*人間中心主義への批判という文脈で読むと、上の『ストーカー』とも通ずるものが感じられるかも。

 

このほかにはジェイムズ・エルロイ『ホワイト・ジャズ』、ロバート・F・ヤング『時をとめた少女』、ジョナサン・カラー『ディコンストラクション』などを読んだ。これらについても書いておきたいので、次の記事を早くにアップしたいと思います。