映画「光をくれた人」感想文
デレク・シアンフランス監督の最新作「光をくれた人」を京都シネマで見てきました。
結論からいうと、めちゃくちゃ良かった……。
第一次世界大戦で心に傷を負った男が、オーストラリアのヤヌス島にという僻地の灯台に赴任してくるところから物語は始まる。
ヤヌス島で孤独な日々を過ごすトムは、近隣の島に暮らす裕福な家庭の娘イザベルと徐々に惹かれあっていきやがて結婚に至る。
溌剌としたイザベルと日々を過ごすなかでトムは心の傷を癒やしていくが、幸福な二人をイザベルの二度の流産という不幸が襲う。
二度目の流産の翌朝、波間にたたずむボートの中に死んだ男と赤ん坊を二人は見つける。警察に連絡しようとするトムを押しとどめ、赤ん坊を二人の子供として育てようと迫るイザベルにトムも説得されてしまい、そこから3人の幸福な日々が始まる。
しかし、トムは妻の実家に帰った時に子供と夫を海でなくした女性ハナの存在を知ってしまい家族の幸福と他人の不幸との間で苦しみ始めるが……。
というのが大まかなストーリー。
こういう映画にありがちなのって、主人公夫婦に全く感情移入できなくって彼らの行動我ただただ胸くそ悪く感じてしまう、何なら後半苦しむのも自業自得やん、みたいな感想だと思うんだけど今回はそれがほとんどありませんでした。
映画の前半で描かれる、ヤヌス島での二人の日々がとても幸福そう*1なだけに、不安定な状況でつい(倫理的に絶対アウトなんだけど)魔が差してしまうのも分かってしまうんですよね。
そして、苦悩するトムをよそに母親となったイザベルが自分のエゴを剝き出しにして行動しようとするのも、あれだけ幸福な生活を描かれてしまうとまぁむべなるかな、というか、正直彼女の行動には腹が立つんだけど同時に行動原理には納得させられてしまう……というのが流石の作劇だと思いました。
最後に、ひたすらに被害者である娘と夫をなくした女性ハナ。彼女の大きな決断がこの映画の方向性を決定づけるわけですが、これに納得できるかどうかがこの映画の得点を決めるポイントかな、と。個人的にはこれ以上の着地はない、という素晴らしいラストになったんじゃないかと思います。
原題のThe light between oceansもいいんだけど、邦題「光をくれた人」もそれに負けず劣らず、映画を見た人ならピシャリと手を打てる気の利いたものになっていると思います。誰にとって誰がそうであるか、を考えてみるとより一層クライマックスにこみ上げるものがあるというか……。あと登場人物の心情をこれ以上ないくらいに反映したエンディングロールも素晴らしいものでした。
何かと他者との軋轢が取り沙汰される昨今だけに、映画館で見る意議はすごくある作品かなー、と。お勧めです。